昨年には、コートジボワールのカカオ農場で児童労働が行われていることが報道され、
先月には、奴隷労働によって収穫された魚を製品に使用していることを黙認していたと、アメリカで集団訴訟されたネスレですが、
世界各地のキットカット製品に使用されている全てのカカオを来年上旬までに国際認証カカオにすると発表されました。
ネスレ日本は、それに先立ち、国際認証「UTZ 認証ラベル」の導入を昨年から進め、
2015 年9 月から日本のキットカット全製品に導入することが発表されています。
さてこの「UTZ認証」、どのような認証なのでしょうか?
フェアトレードとどう違うのでしょうか?
UTZはマヤ語の「Utz Kapeh(良いコーヒー)」に由来し、オランダで2002年に設立されました。
持続可能な農業のための国際認証で、世界116カ国で、主にコーヒーとカカオ、茶で
1万以上の製品が認証されています(2014年時点)。
日本ではまだあまり見かけませんが、ヨーロッパでは広く知られた農作物の倫理的調達のためのプログラムです。
認証基準となるコードは、 Farm Management (農園管理) , Farm Practices (農業実践),
Social and Living Conditions (社会・生活環境), Environment(環境) の分野。
認証を受けるためには、第三者機関による審査を受ける必要があります。
ILO労働基準をベースに労働環境の基準を設定し、特に児童労働には厳しいルールを設けています。
生産者の労働や生活の安全を守るという点では、フェアトレードと同じですね。
UTZ認証と国際フェアトレード認証との違い
ではどの点がフェアトレードやオーガニックと違うのでしょうか?
●最低取引価格を設定していない
最も大きな違いは、UTZ認証には「最低価格」がなく、取引の価格は交渉により決められるとなっています。
これは、農業の実践と持続可能な調達が目的という点で、生産者の自立を目指すフェアトレードと異なります。
しかし、買い手側が十分な価格を支払わない場合には、審査機関から警告があり、登録を取り消すようなことも行われるそうです。
●農薬や化学肥料の制限をしていない
UTZ認証では環境保全を掲げている一方で、農薬や化学肥料の使用は制限されていません。
ただし、使用される農薬などは、認証組織の指導(許可)によるもので、
EUやアメリカ、日本といった大きな市場で禁止されているものは使えないこととなっています。
貧困問題の解決を目指すフェアトレード、環境保護を目的としたレインフォレストアライアンスに対して、
UTZ認証はサステイナブルな農業 – 先進国が安定した供給を確保するための農業 – に着目した認証ということが
感じられますね。
フェアトレードは、途上国の生産者が立場の強い先進国の大手企業に強いられることなく、
労働に見合った適正な価格で対等に取引することで、生産者の自立と発展を目指しています。
国際フェアトレード認証が定めるのは、最低価格と商品代金の前払いを保証する「経済的基準」、
安全な労働環境と労働者の人権を守り、児童労働を禁止する「社会的基準」、
農薬の使用や遺伝子組み換えを禁止し、環境に良い農法を行う「環境的基準」。
(国際フェアトレード基準について詳しくはこちら)
しかし、基準がとても厳しいことや、ライセンス料が高いこと、
アンフェアな取引を主にしている大手企業でも、1商品の基準さえクリアすればその商品にラベルをつけられることで、
様々な方面から疑問を投げかけられることもあります。
たくさんの商品をもつ企業にとって、すべての商品にフェアトレード認証を受けることは、容易ではありません。
認証を受けているということは、様々な要件をクリアし、
消費者の方々へより分かりやすく伝える努力をしているということだと思います。
私たちの身の回りにある商品の背景や、認証ラベルの違いを理解し、
ご自分に合ったものを「選ぶ」ことが大切なのだと思います。
★農家自身が経営するフェアトレード企業、英国生まれのDivine フェアトレード・チョコレートは秋冬販売予定!お楽しみに!★
Huffingtonpost: キットカット、児童労働によって収穫されたチョコレートを使用中止に
Let Justice Roll: Fair Trade, Rainforest Alliance or UTZ: seeing the wood amongst the trees